茂ったアイビーが壁に這いついている喫茶店に、類は走りこんだ。

「いらっしゃいませ」
 
その声を受けながら、店内を見渡す。
 
ここが、いつも師匠との待ち合わせに使う喫茶店である。
 
一時を過ぎて昼休みを取っていたにもかかわらず、会社員らしきスーツ姿のお客が目に付いた。
 
営業職の人たちなのかな。

彼らなら、昼休みは結構曖昧だろう。

お昼休みをずらせて取った類がここにいる時間に、彼らがいても不思議ではない。
 
類はその中に、一人で怪しいオーラを放っている人物を見つけた。
 
師匠だ。
 
その正面に誰かいる。
 
類は青いスーツ姿の師匠の後姿を恐る恐る見ながら近づいた。
 
正面に座っているのは、蒼い顔をした大柄の女性である。
 
仕事の依頼者かもしれない。