そおして、湯佐の腕の関節を逆向きにひねった。
 
ギャーッという、悲鳴が轟いた。

「“キスには、そのとき味わった同じ苦痛を。”」

 プラリと垂れた腕を見てわめきながら、湯佐がしゃがみこんだ。

「それからもうひとつ。大好きな人の受けた苦痛も、返してあげるのが流儀なの。余った分はミドリ先輩の分だよ」

 もう、湯佐は自分の腕の痛みと、尋常じゃない曲がり方にしか感心が無いようだった。

「今度なにか彼女にしてごらん。ここに飛んで帰ってきて、もう片方の腕も折ってやる」

 一応、日常生活や仕事なんかに、あんまり、支障をきたさないように左手を折ってさし上げたのだ。
 
けれどこれ以上の悪行が目に付いたら、もう容赦はない。

「じゃあね。湯佐」

 類はドレスの裾を翻すと、湯佐を置き去りに、そこを離れた。