って、駄目だろうな。
 
自分で納得して、アイコンタクトでお客のチェックをしている、警備員のいる、狭い入り口を、平然としたフリで通り抜けた。

 なんとなく、警戒されていると思うと、緊張する。

警察官が傍を通ると、何も悪いことをしてなくても、何となく居心地が悪いのと同じだろう。

 無口な師匠とトキを見失わないように、会場の中ほどへ入っていった。


「こんなんで盗みが起こらない方が不思議って感じですね」


 類はテーブルに並べられた銀のナイフとフォークを見て、後でいただいていこうと思っ
た。


「盗まれたって、逃げられやすいだろうな。この人数をホテルに完全に閉じ込めて犯人を捜すのもむつかしいだろう」