その格好ではありえないようなスピードで、トイレの数段の階段をなだれ落ち、高いヒールのせいで、コケそうになりながら走った。
 
師匠がここの駅で待つって言うときは、中央出口のキオスクの傍が待ち合わせの正確な場所だった。

 類は息を切らせてたどり着いた。

師匠の姿が見えないので、必死で走ってきた類は師匠に殺意を覚えた。

が、ちょっと歩くと、キオスクの影になって見えなかったところに、やはり白づくめのトキと並んで立っていた。


「お待たせ」


 言うと、二人はいっせいに振り返った。

 師匠もスーツ姿である。


「今日のは誰ですか?」


訊くと、あまりにいつもと違う類に見とれていた師匠は、気を取り直して言った。