アイビーが、綺麗に這いついている壁さえ、今は鬱陶しい。

 引きちぎりたいような衝動に駆られる。

 どうもまだ、脳みそに血が充分に届いてないらしい。

こういうとき、類は裏類になる。

 喫茶店に入って師匠の姿が嫌でも目に入ると、本気で殺気だった。

 普通の精神状態なら、回れ右をして帰ったに違いなかった。


「何の真似ですか!?」


 こっちに背中を向けて座っていた師匠にツカツカと歩み寄ると、師匠の正面に回り込んで言った。


「あら、怒るなんてレディーのすることじゃないわ。いけないわよ。私は怒りたい気分に

なったときは心の中で十数えなさいって、ママに教えられたわ」

 類を見上げている女装の師匠は、目が青かった。