「気をつけてくださいよ。ダイヤは硬い物質ですが、ある一方向にかかる力には弱くて、綺麗にスパッと割れたりするらしいですから」

 師匠の顔が一気に緊張した。

 摘み上げて、だらりと垂れたハンカチの中から慎重にダイヤをケースに戻すと、中田は慌てて、ケースごと取り上げた。

 割れる、と訊いて怖くなったのだろう。

 すでに何回も落としてるやつらにこれ以上触らせるわけに行かないと思ったんだろう。

パクンとケースを閉じてしまった。


「そのまま、懐に入れておかれたらどうですか?怪盗は日にちや時刻を指定してきてるわけじゃないですが、とにかく肌身離さず持っているのが一番です」

「そういわれればそうかもしれんな」

「安心してうたた寝なんてしないように」
 
 類がぼそっと言うと、師匠が睨んだ。