ぐずぐずしてはおれない。

影は塀を飛び降りると、闇に溶けてアスファルトの上を走り出した。

車に走りこむと、頭を覆っていた目出し帽を取り、黒い衣装も脱ぎ捨てた。

そうすると、さっきまでの黒い影と一変する。

影は座席の下から葉巻を取り出して、車の外で優雅に一服した。

紫煙が心地よい香りを残して澄んだ闇の空気に溶けていった。