影は、博物館の窓から飛び降りた。

そのまま少し離れたところに止めておいた車まで走って行くと、息苦しくて、覆面を取った。

顔にハラハラと髪の毛がかかる。

それをかきあげると、影は車にもたれて、ポケットから葉巻を取り出した。

お守り代わりに身につけていたそれに、マッチで火をつけた。

甘い香りが漂う。

その、味と香りを堪能すると、影は車に乗り込んだ。

ライトをつけずに静かに走り出すと、人影も、車の陰もない、アスファルトの向こうへ、影の乗った車は消えていった。