春巻きにかぶりつきながら、類は二人に向かって苦笑いをした。

「だって、おいしいんだもん」

「美味しいって言ってもらえるのはうれしいんですけどね。成瀬君の胃袋、底なしすぎ。その細いからだのどこに、コレだけの料理がおさまるのか毎回不思議で仕方ない」

 だって、入るんだもん。

 類は餃子に手を伸ばした。

 このごろ、あまりに類が大量の料理をむさぼり食うので、カウンターでされていた食事が、リビングのローテーブルの上に移された。

 もちろん、そのテーブルは師匠が自腹で買ったのだ。

 広くなった食事スペースに、大きな皿が所狭しと置かれてある。

軽く十人前はあろうかという中華なご飯を、類はほとんど一人で平らげるつもりである。

「あたし、全身胃袋なんだ。あ、いけない。背中からさっき食べた中華丼がはみ出そう」
 
類ははしを放り出して、大慌てで背中に手を回した。