それから数日して…

 気持ちが落ち着いた恵理香は学校が終わって1人、A交差点へやって来た。

 住宅や商店が入り組んだ、やや狭い路地だ。

 見通しは悪く…

 夜8時を過ぎた今の時間帯は通りを走るクルマはほとんどなく、辺りは静かである。

 ひんやり…

 寒気がして来た。

 それに何だか、不気味な感じがするし…。

 実は今日、あの茅島美紅とメールのやり取りをした時に美紅から注意を
受けていた。

「アナタがA交差点に足を運ぶのは、今はとても危険よ」

 美紅が言うには…

 地縛霊となってA交差点をさ迷い続ける国武涼子に足を引っ張られ…

 闇の世界へと引きずり込まれる危険性があるからだと言う。

 美紅のアドバイスを受け入れた恵理香だが…

 内心は信じてはいない。

 信じてはいないけど…

 こうしてこの場所に立ってみると、本当のような気がして来る。

 国武涼子はこの交差点で亡くなったのだ。

 横断歩道近くの路肩には花束や水、菓子類が供えられている。