「弾いてなかったの?」 弾き終わったときに、日和が声を掛けてきた。 いつの間にそこに居たんだろう? ゆっくりと、確実にこちらへ向かってきた彼女は、俺の横にすっと立つ。 「ね、アレ弾いて」 日和がリクエストするのは、決まっていつも‘エリーゼのために’だった。 何回も何十回も聴いても飽きないのは…… この曲にはたくさんの思い出が詰まっているからだろ?