アナタだけのお姫様


 あたしは携帯を握り締めたまま、物凄い音を立てて扉を開け、部屋から出た。


 階段を転がるようなスピードで走りぬけ、久しく履いていなかったスニーカーを出し、門の前まで走った。


 幸い、スニーカーを合わせても違和感の無い服装だし良かった。



 ――こんな時でも格好を気にしてるなんて、バカなのかもね。


「あ……コート着れば良かった」


 薬を飲んだものの、やはり悪化すると怖い。


 だけど大急ぎで出てきちゃったから羽織る物なんて持ってない。


「家には戻りたくないし……」