叶わぬ恋だとしても。



家へ帰ると、誰もいない部屋に向かって「ただいま」を言った。

小学生の頃はママが「おかえり」って笑顔で出迎えてくれたっけ。

私がわがままを言う度に、ママの笑顔は減った。

それに気付いた時、ママにはもう限界が来ていたんだ。

ママが家を出て行くこと…ほんとはわかってた。

ママの帰りが遅くて、電話した時、その電話を取ったのは男の人だったから。

「あぁ…ママには私よりも大事だと思う恋人が出来たんだ」

勘違いなんかじゃなかったと思う。

その事実を知った日…少し泣いた。

でも、もうママを苦しめてないんだと思うと、心が軽くなったような気もした。

今どこでなにを、だれといるのかもわからない。

私はママを恨むつもりもない。