「月姫様、ようこそいらっしゃいました。」











門前に立つ私を、女官が恭しく迎える。









「こんな美しい桜の時期に、霧子様にお呼びいただけるなんて・・・うれしい限りでございます。」











「霧子様は、月姫様の御歌を楽しみに待っていらっしゃいます。さぁ、こちらへ。」











京の内裏。









都一の秀才と誉れ高い、紀匡章 キノタダアキ の長女。











紀月子 キノツキコ。










父譲りの文才と、母譲りの美貌で、一貴族の長女といえど、その名は京の都で知らぬものはいなかったとか。