図書室にひろの嗚咽が響く。

俺はどうすればいいのか分からなくて、ただひろを見つめていた。


抱きしめてやれば良かったのかもしれないが、

でもきっと、ひろはそんなことは望んでいなかったと思う。


あくまでも俺の勝手な考えだが。



「……俊輔」


しばらくすると制服の袖で涙を拭うひろ。

そして顔を上げて俺を真っ直ぐに見つめる。



「なに?」


「いい?今日のことは誰にも言わないで。

それと…」


「それと?」


「私の涙は今日で最後だから」


そう言い切った顔は、いつもの強気なひろの顔だった。



「え?何笑ってんの?」


突然笑い出した俺を不思議そうな顔で見るひろ。


「いや、ひろはホントに強いなー、って思っただけ」


そうは言ったけどさ、ひろ。

俺は、ちゃーんと、分かってるよ。


それがただの強がりだ、ってことはね。