ひろはまた、俺から視線を外した。
「実はさ。
さっきの話…聞いてたんだ。
聞く気はなかったんだけど、その…会話が耳に入ってきてさ。
ごめんな」
「…別にいい」
ひろの返事は素っ気なくて。
でもそれが強がりだ、ってことを多分、俺が1番よく分かってる。
「なあ、ひろ。
別にいいじゃん。キョンちゃんに彼女がいたって。
好きでいるのはその人の自由なんだから。
俺、キョンちゃんってすげぇいい人だと思ったよ。
多分、俺が女だったらキョンちゃんに惚れてたと思う。
だからー…「もうやめてっ!!」
また、ひろに話を止められた。
ひろは机をバンッと叩いて立ち上がる。
「俊輔、何さっきから勝手なこと言ってるの?!
なにが、どういいの?!
相手に彼女がいる、ってことは私はキョンちゃんの彼女にはなれないんだよ?!
好きでいるのは自由、
ってそれがどれだけ辛いことか分かって言ってるの?!
どうせ、俊輔には分かんないよ。
こんな経験…したこともないんだから。」
ひろ。
ひろのほうこそ、勝手なこと言いすぎだよ。
「俺にだって…あるよ、その経験」
つーか、今、身を持って体験中だってーの。
「ひろみたいに相手に恋人がいるワケじゃないけど。
だけど、俺の好きな人は、俺じゃない男に惚れてるんだ。」


