「小学生の頃さ、俺が廊下を爆走してたら何かにつまずいて転んでさ。
もろ顔面、廊下にぶつけて。
そしたら俺、鼻血ダラダラになってさ。
みんな大丈夫?!って心配してくれたのにひろだけは爆笑してたよな。
もしかしてさ、あれってー…「俊輔」
どうでもいい、くだらない思い出話を遮ったひろ。
「お願い…1人にさせて」
俺のほうを向いたひろの顔には表情と言えるものはなくて。
これこそまさしく『無』だ、なんて思う。
「ヤだ」
「え?」
「今、ひろを1人になんてしたくない」
そう言った俺。
そうするとひろはいつものように困ったような笑顔を見せる。
そして仕方がない、みたいな顔で言った。
「どうして1人にさせてくれないの?」


