廊下を走りながら俺はさっきの自分の言葉を思い出す。
結局俺は…何を言いたかったんだろう。
奇跡が必然で。
ひろが先生を好きになったのは生まれた瞬間から決まってたことだ、って。
そんなこと、先生に話したって何にもならないだろうに。
けど、先生…言ったよな。
『ありがとな、俊輔くん』
って。
何がありがとう、なんだろう。
【キーンコーンカーンコーン】
頭の上でチャイムが鳴った。
多分、6限目開始のチャイムだろう。
俺はお構いなしに階段を駆け上がった。
まだ熱があるせいか、体が重い。
だけど、ひろのことを考えると走らずにはいられなかった。
きっとひろは…図書室にいる。
それで、いつもの席に座って、遠くを見つめながら…
……多分、泣いてる。
ひろの泣き顔を想像すると、
自然と動かす足が速まっていた。


