「じゃあ一応、聞いておこうかな。

俺と仲良くする気がない理由」


余裕な表情を見せつけられると。

自分が子どもみたいでイヤになる。



「だって先生は俺のライバルだから」


「ライバル?」


分かってるくせに。

俺が言いたいこと、気づいてるくせに。

とぼけるなんて、セコイ。



「先生。お願いだからちょっかい出さないでよ。

先生にはちゃんと、心に決めた人がいるんでしょ?」


「ちょっかい出してるつもりはないよ。

ただ、千尋といるとすごく、気が楽だ」


やっぱりこの人は『彼女』という存在がありながら、

ひろに惹かれているんだろうか。



「だけど、ひろは先生といると疲れる、って言ってた。

俺といる時より、何倍も疲れる、って。」


「…そっか。

全然、気づいてなかった。


ありがとな、教えてくれて。」


露骨に落ち込んだ顔を見せる先生。



「千尋にごめんな、って言っといてくれ」


ちょっと寂しげに笑った先生は図書室を出て行った。


そしてどうしてか胸騒ぎがした。

これから何かが起こる、

そんな予感が胸の中を渦巻いていた。