俺を見つめていたひろが、ふっと笑った。



「バカじゃないの、あんた」


「はっ?!なんでそこでバカ、って言われなきゃいけないんだよ!」


「だって俊輔、バカだし」


「いや、理由になってない!」


必死な俺を見てひろが声をあげて笑う。

本当に楽しそうで。

安心した。



「ほら、教室に戻りなさいよ。

ちゃんと、理由言ったんだから」


「あ、ああ、分かってるよ。

じゃあな、ひろ」


ヒラヒラと手を振って扉に向かって歩いて行く。

すると


「あ、ちょっと待って」


と、呼び止められる。



「さっき、俊輔、言ったよね?」


「何を?」


「好きな人がキョンちゃん、って」


「あ、うん」


「勝手に好きな人にしないでもらえる?

私、キョンちゃんが好き、なんて言ったっけ?」


ったく、困ったお嬢様だ。

認めちゃえばいいのに。



「ああ、分かったよ。

違うってことにしといてやるよ」


ホントに違うんだって!

と、後ろのほうから声が聞こえた気がしたが何も言い返さなかった。


だって言い返したところで、

ひろが認めるワケない、って分かってたしね。