「私は…俊輔とは違うの」


「だから、何が?」


「私には…友達がいない」


友達がいない?

何言ってんだよ、ひろは。


あんなにも多くの人がひろを慕ってるのに。



「教室が息苦しい、っていうのは、あそこにいるといつも完璧な高岡千尋でいなきゃいけないからなの」


「完璧な高岡千尋…?」


コクン、と頷くひろ。


「完璧な私じゃないと、みんなは簡単にいなくなる。

上辺ではみんな、友達よ。


だけど、深く付き合ってる友達なんて誰もいない。

私の好きな人とか、家庭環境とか、そういうの知ってる友達、いないの。」


机の上で強く握られたひろの拳が震えていた。

ひろは…ずっと悩んでいたのだろうか。

だとしたら俺は、どうして気づいてやれなかったんだろう。



「仲のいい、親父さんとお母さん。

それとひろに似た綺麗な妹が1人。


好きな人は…キョンちゃん」


「…え?」


ひろが驚いた顔で俺を見つめる。



「だから、ひろの家庭環境と好きな人。


…いるじゃん、ここに。

ひろの友達」


俺は自分を指さし、笑った。