なんの確証もないけど。
だけど、ひろの顔を見てたら分かる。
あんなにやわらかい笑顔を浮かべて、
饒舌になって。
悔しいくらいに『女の子』で。
俺と2人きりのときとまったく違う表情を見せている。
「…俺、教室戻るわ」
盛り上がる2人にそう告げて、図書室を出た。
あれ以上、あそこにいることがどうしても耐えられなかった。
ひろのあんな顔…見たくない。
俺じゃない男にあんな顔…してほしくない。
教室に戻った俺は机に顔を伏せた。
「おーい?俊輔?
どーしたんだよー?」
慎太郎の呑気な声が頭の上からふってきたが何も答えなかった。
口を開いてしまったら、
今、胸に溜まってるものすべてを吐き出してしまいそうで怖かったんだ。
恋って…こんな苦しかったっけ?
好きな人が自分を見てくれないってこんなに辛かったっけ?
胸の奥がズキズキと痛んで。
しばらくの間、俺は顔を上げることができなかった。
きっと、誰にも見せられないような
情けない顔をしていたはずだから。


