不器用なカノジョ。






「…好き、だから」


「………えっ?」


ひろが驚いた顔をする。

俺はドキドキとうるさい鼓動を無視して、

もう1度、繰り返す。



「好きだからだよ、ひろ」


「…そんな」


「何?意外だった?」


「うん。だって私、いつも俊輔に意地悪なこと言ってばかりだから…」


「そうだな。

確かにひろはいつも意地悪なことばっかり俺に言うな」



でも、それでも俺は好きなんだ。

どうしようもないくらい。



「キョンちゃんにさあ、言われたんだ、今日。


大切なものは大切だ、って言わなきゃ分からないし

欲しいものは欲しい、そう言わなきゃいけない。


って。


だから俺、決めたんだ。」


ひろの家に向かいながら、

頭の中はなんて言おうか、そればっかりを考えていて。


ひろの顔を見たら、


あんなことを言おう、

こんなことを言おう、


そう思っていたのに、

そのセリフは全部飛んじゃって。


だた一言。

この言葉しか出なかった。



「ひろ…好きだよ」