「俊輔。俺から1つ頼みがある」


「なんっすか?」


「不器用な千尋を絶対に、泣かせないでほしい」


そう言ったキョンちゃんの視線の先にはひろがいて。

すると、ひろは突然こちらを振り返った。


表情はよくわからない。

でも、たぶん驚いているだろう。



「それ、イチ教師としての頼みですか?

それとも、オトコとして?」


俺って結構意地悪なのかな。

こんなキョンちゃんを追い詰めるような質問をするなんて。



「…両方、って答えは存在する?」


ズルイ、と俺が答えるとキョンちゃんは笑った。



「でもさ、俊輔。

お前はもっと自信持っていいよ」


「自信?」


「そう。間違いなく、千尋に1番近いのは俊輔だから」


「そんなことない」


ひろはいつだって俺に厳しいんだから。

そんな俺が1番近いはずがない。



「いや、近いよ。

俺よりも、響よりも、俊輔は頭1つ分くらい千尋に近い」


キョンちゃんがあまりにも自信たっぷりな口調で言うから。

だから俺は何も言い返すことができなかった。