「なあ、センセ。


俺さ、ひろのことならほとんどのこと知ってるつもりだったんだ。

でも、ホントは何も知らなかった。


勝手に知ったつもりでいたんだ。」


ホント、俺はひろと再会してからアイツの何を見ていたんだろう。

自分が情けなくてイヤになる。



「俊輔?

そりゃあ、無理な話だよ」


「え?」


「人っていうのは、分類すれば『ヒト』っていう1種になっちゃうけど。

でも実際、人は個々で全然違うんだ。


だから千尋のすべてを俊輔が知ろう、とか分かろう、って思うこと自体、無理な話だと思う」


「でも、俺は知りたいよ。

ひろのこと、スキだから。


だから誰よりも、ひろのことを知りたい。」


そう言うとなぜかキョンちゃんはとんでもなく優しい笑顔を俺に向けた。



「それ、すっげー大事だと思う。

好きな人のことを知りたい。誰よりも知りたい。


そう思うことって大事。

だから、俊輔が納得いくまで千尋のこと、知ればいいと思う。」


キョンちゃん。

そんな簡単に言ってくれるけどさ。


でも、ひろは甘くないよ。

昨日はたまたま教えてくれたけど。

でも今日だったら教えてくれなかったかもしれない。


ひろってそういうヤツだからさ。

俺がいくら知りたいって願ってもきっと、叶わないんだ。