不器用なカノジョ。





震える私をお母さんが抱きしめてくれた。

お母さんはやっぱり温かくて、懐かしい匂いがした。


先生が帰ったのと入れ違いのようにお父さんが来た。



『明海は?!あの子は大丈夫なのか?!』


息を切らし額を汗で濡らしたお父さん。

目は血走っていて。


きっとお父さんも不安なんだ。

そんなことをどこか他人事のように思っていた。



『今、必死で闘ってる。

…大丈夫。あの子は死なないわ』


お母さんはそう言って力強く頷いた。


そうだ。

お母さんの言うとおりだ。


明海は、死なない。


あの子は、こんなに簡単に死んだりしない。


そう自分に言い聞かせることで私は必死に私を保っていた。


【ウィーン】


その時、手術室のドアが開いて、看護婦さんらしき人が現れた。



『明海はっ!?』


お父さんがその人のもとへ駆け寄る。


『今、手術中です。

思ったより出血が酷くて血液が足りません。


ご家族の中でAB型の方はおりませんか?!』