『おい、高岡。
あっちだぞ』
『あ…はい、すいません』
病院に着いてもやっぱり私はおかしくて。
明海の笑顔が頭に浮かんで離れない。
『あ…先生。
すいません、ご迷惑かけて』
【手術中】ドラマで見るあの文字が赤く灯っているのを見た。
『いえ、大丈夫です。
それよりも娘さんは…』
『どうやら信号無視をした車とぶつかったようで…』
お母さんが先生と話しているのを目の端で捕えながら私は赤いランプから視線を逸らすことができずにいた。
明海が今…この中にいる。
そう思うと急に足がガクガクと震えだして。
心臓がバクッバクッと大きな音を立て始めた。
『高岡?大丈夫か?』
『…私は、大丈夫。
でも明海が…明海が…明海ぃ…』
今朝まであんなに元気に笑ってたのに。
あんなに元気に走ってたのに。
今、あの子は…死の間際を彷徨っている。
お願い…神様。
もしも、本当にいるのなら。
どんな困難を私に与えてもいい。
だから、明海を助けて。
明海を、殺さないで。


