不器用なカノジョ。






『え?ウソでしょ?何言ってるんですか、先生』

言葉とは裏腹に顔が引きつった。


『ウソじゃない。

今、親御さんから連絡があった。』


ウソだ。

ウソだ。

ウソだ。


明海が事故にあうなんて…


そんなの…アリエナイ!



『…おい?高岡、大丈夫か?』


『…あ、はい』


頭の中はぐちゃぐちゃなのに、意外にも私は冷静だった。



『今すぐ帰る用意をしろ。

俺が病院まで送って行くから』


担任の言葉に従って私は教室に戻る。


『千尋?大丈夫?

魂抜けた顔してるけど』


『ああ…うん、大丈夫』


『そう?…え?帰るの?』


『うん…ちょっと…急用…で…』


『千尋?ホント大丈夫?なんかヘンだよ?』


『私は、大丈夫…』


『え?私は、ってどういうこと?』


その言葉に返事をすることなく、私は教室を出た。


何も、考えられなかった。

…いや、そうじゃない。


何も、考えたくなかった。

だって、きっと頭を回転させ始めてしまったら。


私は最悪なケースしか想像することができないから。