荷台を掴んでいた手に力が入った。
「ひろがその話をしたくないのは分かってる。
それ承知で俺は聞いてるよ。
でもさ、ひろ、隠し事多すぎるんだよ。
なんでもかんでも隠して、自分で背負ってさ。
やめろよ、そういうの。
弱い自分とか苦しんでる自分とか、隠すなよ。」
「別に隠してなんか―…」
「だから、そういうのもやめろって」
俊輔が少し声を大きくする。
そして信号が青に変わった。
「なあ、ひろ?
1回さ、俺の前で弱いひろ、見せてくれたじゃん。
だから今さら、強がるのとかナシだろ。」
俊輔の背中を見つめる。
そう言えば小学生のころ、何度もこうして俊輔と2人乗りしたっけ。
…俊輔の背中、こんなに広かったっけ。
あ…でも最後に2人乗りしたのはもう5年くらい前だから、広くなってて当たり前か。
「ひろ?聞いてた?」
「うん、聞いてた」
はあ、と1つ息をつく。
「俊輔」
「ん?」
「約束して」
「何を?」
「今から話すことを絶対にも誰にも言わないで。
それと」
「それと?」
「家に着くまで絶対に振りかえらないで」
きっと、普通の顔してられないから。
そんな顔、俊輔に見られたくない。
「分かった。約束する」
俊輔のその言葉を聞いて私は大きく深呼吸した。
そして、封印したあの頃のことを少しずつ思い出しながら喋り始めた…