―Side 千尋―



ある日の部活帰り。



「ひーろ?」


「…げっ…俊輔」


心の声が思わず声に出てしまった。

そうすると俊輔は露骨に落ち込んだ顔を見せる。


俊輔のこの顔、今までに何度見たことだろう。



「まあいいや、俺、気にしない」

そう言った俊輔はいつものようにヘラヘラと笑う。


「後ろ、乗ってかない?

家まで送るよ」


「はあ?あんた、何言ってるの?」


そりゃあ、今日のあんたは自転車通学だから後ろには乗れるけど。

でも、ここからうちまで何分かかると思ってんの?


「いやあ、さ。

たまにはひろとゆっくり話したくて」


「いつも話してるじゃない」


「だーかーらっ!

ゆっくり、いろんな話をしたいの。


…はい、早く乗る!」


無理矢理カバンを取られる。



「…強引」


「ひろはこうでもしないと言うこと聞いてくれないでしょ?」


まあ、そうなんだけどね。


「転んだら二度と口利かないからね」


「はいはい、お嬢様」


バカにしてるな、俊輔のヤツ。

そう思いながらも私は荷台にまたがった。