「…知ってたならあんな聞き方しなくてもいいじゃない」


ひろがボソッと呟く。

でも俺はそれに構わず言った。


「ひろ、抱きしめられてたね」


「………」


「ひろ、拒まなかったね」


「………」


「ひろ、笑ってたね」


「…言いたいこと、あるならはっきり言って」


ひろが俺を見ているのが分かる。

でも、俺はひろを見ることができなかった。


きっと、そのひろの真っ直ぐな瞳を見てしまったら。

俺はきっと…取り返しのつかないことをしてしまうから。



「…健とより戻すの?」


声が掠れた。


「…どうして俊輔がそんなこと気にするの?」


「…だって俺、ひろの幼馴染だから」


ひろが好きだから。

そう言えたらどんなに良かっただろう。

でも今の俺にそこまでの勇気はまだ、ない。



「幼なじみって俊輔が勝手に思ってるだけでしょ?」


「…じゃあ、友達だから」


「それも俊輔が一方的に思ってるだけかもよ」


「…それじゃあ、俺はひろの味方だから」