「ひろ」


「なに?」


俺とひろは隣にいるのにまだ後夜祭が始まって1度も目が合っていない。

なぜなら俺がひろを見ないようにしているからだ。



「どうして遅れたの?」


「…友達に、呼び止められちゃって。

それで少し話、してたから」


ひろ。

それで誤魔化してるつもり?

甘いよ。甘い。

俺のこと、見くびってんの?


そんなに動揺してたら俺、簡単に気づいちゃうよ。



「どんな話したの?」


「どんな、って…他愛もない話よ」


「他愛もない話って?」


「…他愛もない話は他愛もない話よ」


ひろってウソつくの、そんなにヘタだったっけ?



「別にウソつく必要なんてないと思うけど。」


「ウ、ウソなんて…」


「ついてるじゃん。

ここから、丸見えだよ…あの場所」


俺はそう言ってさっきまでひろと健がいた場所を指さした。