「俊輔、あんまり調子にのるなよ」


「はあ?何が?」


後ろにいる健が異常なくらい鋭い視線を俺に送ってきやがる。



「だから、俺より1歩先にいるからって千尋が自分を好いてる、なんて思うなよって。」


笑わせてくれるぜ、まったく。



「んなこと思ってねーよ。

ひろがそんな簡単に俺のこと好きになってくれるワケがないことくらい、俺が1番よく分かってる。


でも、意外だったな」


「なにが?」


「お前が自分のほうが1歩後ろ行ってること、認めたっていうことが。」


なんだかんだ、健、プライド高いし。

健、負けず嫌いだし。


…って、健の性格、微妙にひろに似てんじゃん。



「…仕方ないだろ。

…事実は、事実だ」


健は俯いてボソボソと呟く。



「悪いけどさ、健。

俺、今お前に勝ってるけど。


でもここで手を抜く気はサラサラないよ。

このまま突っ走るから。


だから、負けたくないならお前も本気出せ」


「言われなくてもそのつもりだ」


俺と健の間でバチバチと視線がぶつかる。


隣にいる慎太郎が笑いを堪えているのが分かった俺は慎太郎を見ることなく、スネ蹴りを1発お見舞いしてやった。