「いや…俺、美帆とは別れたくない」


「はあ?なんで?」


「だって俺、アイツのことスキだから…」


何言ってんだ、コイツ。

殴ってもいいっすか?

1発だけなんで。


と、誰に言うでもなく心の中で呟いて、溜め息をつく。



「慎太郎…お前、身勝手だな」


「え?」


「え?じゃねーよ。

なんだよ、それ。


お前、美帆ちゃんが好きならなんで響ちゃんに惹かれてんだよ。

で、惹かれてるくせに美帆ちゃんが好きだから別れたくない、ってなんだよ。


そんなの理由として認めらんねーぞ。」


「…やっぱ…そうだよなあ…」


頭を抱え机に突っ伏す慎太郎。


やっぱそうだよな、って分かってたのかよ。

ならなんで別れたくない、なんて言うんだよ。


バカか、お前はホントに。



「慎太郎、諦めろ。

惚れたら負け、なんだからさ」


「…惚れたら負け、かあ」


「そうだよ。

惚れられることが勝ちとは思わないけど。


でもやっぱり惚れたほうが負けだ。

なんせ、うずうずしながらもその人を見守ることしかできないんだからな」


慎太郎にそう言いながら

なんだか自分に言い聞かせてるみたいだ、

なんて頭の隅で考えていた。