4球目
「…ストラーイク!」
2球目と同じような球を投げた。
そうすると先輩はバットを振った。
でもあえなく空振り。
これで2ストライク2ボール
なんか最高のシチュエーションだな、おい。
ロージンを握る。
あー…ヤバイ。
やっぱり緊張する。
だって俺のこの1球にかかってるじゃないか。
ここでもし、先輩をアウトにすることができたら。
そしたら、この波は完全に俺たちのものになる。
だけど、打たれたら。
せっかくの波はきっと…どこかへ行ってしまうだろう。
この1球は俺たちの全てがかかってるんだ。
緊張しないワケにはいかなかった。
ボールを見つめる俺。
と、そこへ突如聞こえたこの声。
「…バカ俊輔ぇー!!!」
思わず、ふっと笑ってしまった。
抑えろ、でもなく、頑張れでもない。
応援にふさわしくない、一言。
『バカ俊輔』
これだけ大きな応援にグラウンドは包まれているというのにどうしてかその声だけははっきりと俺の耳に届いた。
…ひろ。
ちゃんと、ひろの声、俺に届いたよ。
ありがとな。
勇気、出た。
ボールを握りしめ、大きく振りかぶった…