白は花嫁の色


帰宅した俺を姉ちゃんは見逃さなかった。

救急箱を手にし、「大丈夫?腫れてる、我慢しないで」と、保健室の先生みたいなことを言う。


心配されるだけで嬉しく思う。

手当ての時は姉ちゃんが俺のことだけ考えてくれるから、それなら喜んで怪我をしたい。

幸せだ。不謹慎だけど姉ちゃんを独り占めできるなら、入院だってしたいくらいだ。


頬に氷水をあて、タオルで頭に巻き付けてくれた。なんだか一昔前の歯医者さんみたいで笑える。


平気なんだけど、甘えたくて故意に頬を摩ってみた。…小さな怪我に泣き叫ぶ実と変わらないと思いながら。



「口、中切れてる?」

「分かんね、多分、痛いかも」


こんな風に姉ちゃんに心配してもらえるなら、それは愛されている証拠。


――姉ちゃんは俺だけを見て、俺だけのことを考えていて、

今、確実に姉ちゃんは俺のモノ―――


少しだけ、ほんの少しだけ心の中で堀に感謝した。