「すっげー好きなんだ。大好きなんだ。堀とは正反対のタイプの子だよ。
なあお前は?堀は好きな奴いないのか?クラスメートだろ、協力するからさ!教えてよ!」
「馬鹿!!!!!!!」
教えてよ、に被せて馬鹿と罵られたが、――同時に頬に強い衝撃を感じた。
「っ――〜てぇ…!?」
走り去る堀。残された俺。
……。
なんだよ、なんで打たれるんだ。痛ぇ。口ん中切った、絶対切った。
生暖かい血の味が口内を回る。シナモンみたいに鉄臭い味。
――“分かんない”って言った俺のことを好きだとか、ありえない。
顔しか好きじゃないくせに…。何も知らないくせに、好きになるはずがない。
「意味不」
小さく零した呟きは堀の足音と一緒に消えていった。
…ようやく鬼が里帰りしたみたい。
電線を刻まれた空には光度の弱い星が輝き出していた――



