「好きな奴、居ねーの?」
「あははー??」
姉ちゃんは笑う、頷くような首を横に振るようにして、
尚も笑いながら「王子様を待っとくから」と白い歯を見せた。
夢みがちなあたりは、お伽話のお姫様と変わらないようだ。
――だったら尚更、俺は早く連れ去ってあげる王子様にならなくては。
―――この時の俺は本当に気づいていなかったのだろうか。
溢れる太陽の光りの下で、姉ちゃんの瞳に王子様が映ったことを。
―――まだ王子様になれて居なかった俺だから、気付けなかったのかもしれない。
気持ち良い爽やかな風に茜の声が重なり、軽やかに流れてゆく。
未知の予感に汗をかきながら、「好きなタイプくらいは?あるだろ」と尋ねた。
――真正面から向き合う。
狂ったようにドキドキとする心臓が爆発して壊れそうだ。
姉ちゃんは一息ついて、少し照れ臭そうに、はにかむ。可愛い少女みたいな表情で――
「うん、黒髪、かな?」



