「はあ?!」
…遠藤が可愛い?
中学生の癖に、受験生の癖に色気づいて中途半端に茶色くした髪の遠藤が?
まつ毛がもさついている不慣れな化粧をした遠藤が?
―――可愛い?
甘採点でも思えないんだけど。
目を見開き眉を寄せ、唇を歪めて思いっ切り否定する顔面を作り、
俺は反論する為に口を大きく広げた。
「可ー愛いのかもしれないけど。
……どーこがー?俺の理想のー彼女像とはー違うねー、あーいうんは違うなー」
間接的に遠藤を傷つけたくないから、わざと間延びさせて少しおどけた雰囲気を作り、
けれど、絶対にありえないといった口調で。女として見ることは出来ないと含みを込めて。
…恋の話は苦手だ。この手の話を早く切り上げたい。
その一心で、素早く荷物をまとめると教室へ向かう足を速めた。
……けれど、そうはいかない。
中学生ってもんは恋愛がすべてだから。思春期において、恋愛が頭の九割を占めているのだから。



