分かってる。分かってるんだ。
………そんなの、
俺が問える立場じゃないじゃないか。
俺より実が、大事で、可愛いに決まってる。まだ小さいんだ。
――分かってる。のに。
俺は“兄”で…我慢しなきゃいけないんだから、分かってる。
「風呂、入るわ」
会話に返事をしなかった俺に、姉ちゃんは「雅?」と声をかけるけれど、
聞こえないふりをして逃げるように風呂場へ駆けた。
―――悔しかった。
かなしかった。涙が溢れた。
勝ったって、ベスト出したって、姉ちゃんが見てないんじゃ、まるで意味がない。
姉ちゃんが見ていると思うから頑張っただけで、見ていなかったんだから、
――勝ち負けなんかどうでもいい。
…実のせいだ。
なんで邪魔するんだよ。
約束したのに。
そうだよ、実は元気なんだから、途中から来てくれたっていいのに。
試合に間に合わなくても、会場に来るくらい出来るのに。
…俺が来てって、言ったじゃん。
行くって言ったじゃん。
約束したじゃん。



