子供みたいに怒っていることを悟られたくなくて奥歯を噛む。
ふすまの向こうに居るであろう実を探す為に、靴を乱暴に脱いだ。
「みのる…?」
実を見た瞬間、腰の骨が砕けたみたいに身体の底から落胆した。
「怪我っ……どこが、だよ」
錆び付いた掠れた声だった。
怪我だと言ったのに、当事者の実は、茜とぴょんぴょん――元気過ぎるくらい跳ねているではないか。
怪我?これのどこが怪我人なんだよ?
露骨に眉をひそめるなり、「泣いて痛がったの」と、姉ちゃんが申し訳なさそうに言う。
フォローする間合いが的確で、余計に俺を苛立たせた。
――どうして実の肩を持つの?
「そだよ、うるさかったんだよ。姉ちゃん姉ちゃんって泣いてた癖にさー。
実ってば五分もしたらケロっとしてた」
男子の癖にばかだよね、と同意を求める椿は無意識に俺を追い詰める。
五分…五分後に来てくれたっていいじゃないか――
落書きをしながら椿は姉ちゃんと俺、二人の会話に口を挟んだ。
分かっている。
――実は痛かったのかもしれない。…姉ちゃんは、ほっとけなかったのかもしれない。
姉ちゃんは優しいから、泣いてる弟を、おざなりにできなかったことくらい分かっている。
―――でも。



