遅刻かもしれない、姉ちゃんは途中で来るんだろう。
だってワンピースで自転車に乗るのは大変だろうから、仕方がない。
今日は風が強いから、仕方ない。許してやろう。
そんな風に遅刻している仮定をし、―――だから俺は集中して頑張った。
息が上がらないよう走る。
ボールが飛ぶ空間を予測しながら走る。
チームの中だと背は高い方だけど、やっぱり身長や手足の長さだけに甘えたらいけない。
ディフェンスが弱いと他校の奴らによく言われてきた。
点を取るだけが“カッコイイ”んじゃない。
頑張って走る。
頑張ってシュートを決める。
――頑張る理由はただ一つ。
点を重ね余裕が出たところで、西側の角をちらちら見るが、居るべき人が居ない。
試合中だ。
ただひたすら頑張った。



