俺だけ匂うからエチケットとして渡されたのだろうか?

フローラルってお花畑じゃん…完璧ファンタジーじゃねぇか。

…何、俺そんなメルヘンキャラな訳?


びっくりしないか?すれ違い様に中三の男子から花の香りがしたら…。


心の中でツッコミを入れるも、ありがたく俺はスプレーを拝借した。(一応エチケットが気になる年齢だから)


予想以上の甘い香りが鼻孔をくすぐる。

――こういう香りは好きだ。

花畑でれんげの王冠を作っていた可愛いあの子が浮かぶから――…



ぼんやりと、それこそ頭の中をお花畑にしていたら、ふっと鼻を鳴らす音がした。


トリップしていた意識を“こちら側”に戻せば、

耳に入るのは聞きなれた声、低レベルだと大人に馬鹿にされる友達の会話。


「遠藤って市井狙ってるな」「わざわざ朝練見に来るしな」

朝っぱらからにやにやとした笑顔がまぶしい。が、こんな薄い笑い方は太陽に似合わないだろう。


「で?お前どーなんだよ、可愛くね?遠藤」「告白されたら付き合っちゃう感じ?」






「は……?」

思っても見なかった問いに、答えを持ち合わせていなかったので、

動揺した証拠に、ひどくマヌケな裏返った声が出た。