「ん、惚れた?ドキっとした?」

「うーん、ちょっと臭いからマイナス」

「厳しいな!?今の恋に落ちるところだから!結構そのつもりだったんだけど?」

こんな風に際どい発言をしたって意味はない。
――だって俺たち兄弟だから。男女ではないのだから。


こうして「あはははっ」と笑う姉ちゃんにとって、俺はただの弟。

――弟は弟。


いつもいつも姉ちゃんの前では少し紳士ぶって見ているのに、

ちっともときめいてはくれない。答えは明確、なぜなら俺が弟だからだ。


――分かっている、なのにズキズキと心が重たいんだ。
しつこいくらいに痛む。

これじゃあ甘えたな実と変わらないじゃないか。


「いってらっしゃい」
「うん、おやすみ」


いつもと変わらずばいばいをして、姉ちゃんの背中を見送る。

――まるでお姫様をお守りする騎士みたいだな、なんて。


姉ちゃんが光りの国のお姫様ならば、

――俺はどこの国の王子様になれるのだろうか。

そんな疑問を真剣に考えるあたり、まだお子様なんだろう。



――結婚して本当の家族になりたい。
本物の家族になりたい。


一人の夜道だが、まばゆい光が降り注がれている。

そう、いつだって姉ちゃんが居る未来は明るいはずなんだ―――