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およその社会人が帰宅する時間帯の暗い道を、姉ちゃんと歩く。

電線のかかった空は近いのか遠いのか分からない。


いつも決まって学校でのことを面白おかしく誇張して話すんだ。

本当はバイト先での話の方が新鮮で面白いんだけど、――働いていることは秘密だから話せない。

…もしバレたら受験生だからと辞めさせられるに違いない。


いまいちなオチでも「アハハ」「うける」と笑ってくれるから、

俺はやっぱり大袈裟に演出して話してしまう。


――好きな人の笑顔が見たいから、人はお喋りが好きなのだと思う。

お金をかけなくても、自分の言葉で笑顔を見れるなら安いもんだ。


俺の隣をふわふわと歩く人と、ずっとずっと一緒に居たい。

……姉ちゃんはきっと弟としてそう思ってくれているんだろう。

それでも、いつか―――



「雅!一点取ってね試合」

「はあ?一点かよ?そんな点数「あはは!ルール知らないからあんまり、へへ。

何気に観戦初めてじゃない?だからお姉ちゃん緊張するよ。

ちび達のせいで応援行けなかったもん」

部活を初めて二年少し、バスケの話はたくさん姉ちゃんに話してきた。

こうして歩く二人の道で、いつも話してきたから。


――唇を引き上げ笑った。笑顔は慣れている。


「……。ルールなんかいいよ、姉ちゃんが来てくれたら俺頑張れるし」

「なによーいい子発言じゃない」


目尻を下げて甘く笑う姉ちゃんは、砂糖菓子みたい。

ちくりと痛んだ俺の胸を、結局は甘く甘く満たしていくんだ――…