白は花嫁の色

――

「「ごめんな」」

朝練が終わった瞬間、久保と相坂はそう言った。

ごめんとは、あの日のことだ。

俺はもう大丈夫。貧乏なことを恥じない。だって貧乏なお城にはお姫様が居るから。

二人を嫌いになったり責める気にはならなかった。

悪気がないし、むしろ俺を哀れまずに態度で示してくれただけで感謝したいくらいだ。

それにこの先、俺が姉ちゃんや家族を守ればいいだけの話。

――王子様になるまでの今を我慢すればいいだけの話。


勉強して、頭良くなって、良い大学行って、良い会社就職して、出世して家族を養ってやる。

もちろん、本当は全部姉ちゃんへの想いがあるからだけれど。

――秘密にするつもりはないけれど、まだ秘密だ。







「兄ちゃん!熱燗二合」

背中に声が掛かり、振り返ると人差し指と中指を立てたお客さんが俺を呼ぶ。

――考え事はナシだ。頑張ればいいだけだから。


「はいただいま!」