――俺は王子様になりたい、と思った。
お金持ちになって素敵なドレスを着せてあげて、キラキラなお姫様にしてあげて、
姉ちゃんに笑顔でケーキを食べさせてやれる、そんな王子様になりたい、と。
別に王子様じゃなくて、ただ恋人になれるだけでいいのだけれど。
だけど、お姫様に恋をしたなら、……ならば相手は王子様がふさわしいだろう?
――王子様になりたい俺の夢。
かっこいい王子様になって、貧乏な暮らしから贅沢な暮らしができるように、さらってあげるんだ。
まだ時間がかかるけれど、ちゃんと努力して姉ちゃんに似合う王子様になるから。
泣いた時に抱きしめてやれる大人になるから。
――俺のすべて。
中学生なりに最愛の人。
姉ちゃんは俺の夢そのもの―――
将来のすべて。人生のすべて。
――市井雅のすべてなんだ。



