白は花嫁の色


本当に嬉しかった。嬉しい。

母親の居ない市井家の母親代わりが姉ちゃんみたいなもんだったから、

いつも実や茜がべたべたと姉ちゃんの腕の中に居た。

それが当たり前だったから、俺が姉ちゃんを独占したことなんてなかった。

いつも決まって思い出には兄弟が居て、二人だけの思い出なんか本当に少なくて。
…土手で遊んだ時くらいだ。


嬉しかった。
姉ちゃんを独り占めできる時間を、もう何年も願っていたから。

気持ち悪いくらいにやけているんだろう。それでいい、構わない。幸せなんだから。


「じゃあ私内職するんだ、帰ろー」
「うん!!」

大好きな姉ちゃんと家に帰る。ぼろい壁の、隙間風のある窓の、軋む床の、貧乏な家。


――そこはお城に思えた。

贅沢な幸せのつまったお城。豪華な思い出だらけのお城。姉ちゃんはもちろんお姫様。


……なあ姉ちゃん、俺好きでいていいよな?

とにかく受験頑張るから、そうしたら告白させてほしいんだ――
そして頷いてくれたなら…



――お姫様を幸せにするのは王子様の役割だろう?

だから俺は早く王子様になりたい。