たったそれだけで、と思うかもしれない。
それだけで幸せを感じられる俺は、誰にも説明できないくらい姉ちゃんが大好きなんだ。
本当は言いふらしたい。俺の好きな女は最高なんだと自慢したい。
「えーそうかぁ、うん!見に行く!!」
単純に嬉しかった。今までの試合は実や茜、椿だって子供だから、
おもりをしないといけなくて、やんわりと誘っても曖昧にはぐらかされてきた。
だから嬉しかった。姉ちゃんが見に来てくれるなら勝つしって思う。
……でも、どうせ兄弟はついてくるんだろう。
なんせまだ小さいのだから、留守番をさせる訳にはいかない。特に末っ子の実は甘えただから…。
嬉しくもあり、どこかつまらなくもあって、俺は薄く微笑んだ。
――灰色な喜び。
「頑張ってね!!実とかはお父さんに預かってもらうよ!!」
にこりと笑う姉ちゃんはエスパーかもしれない。
どうして、どうしてだろう。どうして俺の考えていたことが分かるんだ?
――姉ちゃんだけに応援に来て欲しかったワガママな気持ちを。
嬉しかった、嬉しくてしょうがなかった。
「うん!!!!」
自分でも笑えるくらい幼稚園児のような元気いっぱいの声が出た。
――だって、夜道以外で姉ちゃんを独り占めできるから。



