埒が明かないので、「そっか、ありがとう」と財布にそっとしまった。
――今、決めた。
二度と私用に使わないと。
社会に出て働いたことのない俺には、金を稼ぐ大変さが分からない。
だが、金の大切さなら俺はよく知っているから。
――お金があれば幸せになれるんだ。
黒い空間にある輝く星は小さな粒で、まるで子供がいたずらしたシールみたい。
――不揃いに貼ってある。
空なんて普通の人は、なかなか見ないんじゃないかと思うんだ。
考え事とか、現実から遠い無心になりたい時に、人は空を仰ぎ見るのだろう。
その空間には人が居ないから、自分とだけ対峙することができる。
――でも俺は悩みがあっても、地面に突っ立たまま空ばかり見るんじゃなくて、
姉ちゃんを見ながら、立ち止まらずに未来へと歩いて居たいんだ。
ばかな弟の俺は姉ちゃんさえ居れば、幸せになれるに決まっているから。
「姉ちゃん、来週さ?土曜試合があるんだ、見に来てよ、まぁ、出来ればだけど」
夜空から目線を姉ちゃんへと移す。
――と、すぐに姉ちゃんと目が合って…
姉ちゃんはずっと俺を見てくれてたんだなと分かり、心がじんわりと温かくなった。
その瞳の中に俺が居る瞬間瞬間、姉ちゃんがときめいてくれたなら――



